桃源郷の歩き方 マカオ編第1話 ~初めてのマカオ~
世界の桃源郷 マカオ
2011年8月の、とある金曜日の午後。前日の夜に日本からJAL便で香港に移動し、朝からセントラル(中環)と九龍で精力的に投資家や事業パートナーとの面談を済ませた信彦は、一帯にそびえたつ高層ビル群の屋上にロープで引き上げられるような高揚感を覚えていた。
信彦「予定通り面談終了したよ。そちらはどう?」
貴博「こっちは既に準備万端。今どこ?」
香港に住み始めて1年ほどの貴博にフェイスブック・メッセンジャーを送ると、間髪入れず返事が返ってきた。
貴博は父親が経営する貿易会社の次男坊。信彦と貴博は東京で知り合ったが、その後貴博は会社の事情により香港に住み始めた。貿易会社の年商は60億円程の模様だ。詳しい経済事情は不明だが、百歩譲って大富豪でないとしても、金回りは悪くは無さそうだ。ただ、それよりも重要なことは、彼と一緒にいると心地良さを感じることである。
ちなみに信彦は、あまり顔や態度には出さないが、人の好き嫌いが非常にはっきりしている。独自の評価基準により、気持ちの良い人が好きで、気持ちの悪い人が嫌いである。貴博は、もちろん大変気持ちの良い人である。ついでに言うと、好きな言葉は「人生は何事も経験」「適正価格を見極めよ」「据え膳食わぬは男の恥」の3つである。
信彦「じゃあ、俺の泊まっているホテルで合流で良いかな?セントラルのマンダリン」
貴博「オッケー、30分で行くよ」
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相談の結果、信彦が宿泊しているマンダリン・オリエンタル・ホテルのクリッパー・ラウンジで合流することになった。ちなみに同ホテルは、グローバル展開するマンダリン・ホテル・グループの第1号店で、開業は1963年まで遡る由緒正しき素敵な高級ホテルである。
丁度30分で時間に正確な貴博がやってきた。老若男女を問わず、時間に正確な人には心地良さを感じるものである。
貴博「昨晩の到着時間、遅かったんでしょ?お疲れ様!」
信彦「ありがとう。でも、今日の夜に備えて昨日は早く寝たから、今はエネルギーに溢れているよ!」
そう、昨晩は午後11時前に香港国際空港に到着し、ホテルにチェックインをした時には既に12時を過ぎていた。しかし、さっとシャワーを浴びて午前1時までには就寝していた。今日のリアル桃源郷であるマカオへの大冒険に備えて。
今回のマカオ訪問の目的は、翌日に通信関連の展示会に参加し、何件かの商談を済ませることである。一日早くマカオに乗り込み、初体験のサウナで市場調査を行うことを画策しているのである。
貴博とは、この約2週間前の7月に、共に広東省東莞市の常平を訪れていた(参照:桃源郷の歩き方 東莞常平編 序章 )。なお、今回のマカオ訪問の後、常平に向かう予定となっている。
ちなみに今回は、2人の共通の遊び仲間であるジョージはベトナムで不動産を購入するらしく同地に出張中で参加が叶わない。洋風な要素はほぼゼロだが西洋風の正統派ニックネームを持つ彼も、大変気持ちが良い人間である。彼が参加すると更に冒険は楽しくなるのだが、今回はやむを得ない。
信彦「今4時だから、お茶を飲んで4時半位に出発にしよう」
貴博「そうだね。今日は大事な市場調査だからね!」
信彦「望むところだね!」
お茶を飲み終えた信彦は部屋に荷物を取りに帰り、2人は4時半過ぎにマンダリン・オリエンタル・ホテルを出発した。
ホテルの入り口からタクシーを拾い、ほぼ渋滞も無かったため、5時前には上環にあるマカオ・フェリー・ターミナルに到着した。
貴博「ここで、クーポンを買っていこう!」
信彦「クーポン?」
貴博「そう、クーポンだよ。サウナやナイトクラブの利用券と往復フェリーのチケットがセットになったもので、かなり割引が入ってお得なんだよ」
信彦「でも帰りは香港に戻らず、直接東莞常平に行くでしょ?」
貴博「帰りのフェリーのチケットは不要と言えば、その分若干安くしてくれるよ」
信彦「なるほど。よく出来たシステムなんだね!」
貴博は香港に住み始めて約1年、マカオには行く機会が多いらしく、手配も移動も手慣れたものである。
このマカオ・フェリー・ターミナルには、通常のフェリー・チケット売り場だけでなく、夜遊び系クーポンを専門に扱っている旅行代理店が10か所弱存在する。それらの代理店には風光明媚な広告が掲げられているため、一目瞭然である。
貴博「とにかく、マカオに初めて行く人は、エイティーン・サウナに行かないといけないんだよ。これは義務教育だね。中国語では十八桑拿。発音が”スーパー”だから、スーパー・サウナという意味を掛けているみたいだね」
信彦「全て、貴博師匠に従うよ。そうすれば、間違いは絶対に起こらないはず!」
成功旅行社という代理店で、エイティーン・サウナのクーポンを買うこととなったが、フェリー代を含めて、約2,000香港ドル(当時は市場最高レベルの円高であり、20,000円程度)である。別々に支払うと、約2,300香港ドル(23,000円程度)なので、かなりお得である。しかも、サウナでのマッサージや洗体等の無料サービスも付いている模様である。
ちなみに信彦の好きな3つの言葉のうちの1つは「適正価格を見極めよ」である。何でもかんでも値切ったり安ければ良いというものではなく、モノやサービスの価値を見極め、それ以下の値段で買う、もしくは、それ以上の値段で売るという思想である。このクーポンは、市場価値を大きく下回る大変お買い得なものである。ついでに言うと、残りの好きな2つの言葉は「人生は何事も経験」と「据え膳食わぬは男の恥」である。
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復路のフェリーチケットが不要なため100香港ドルを差引いた値段で無事クーポンを購入し、マカオ行きのフェリーの改札口のようなところを通過し、イミグレに並んだ。金曜日ではあるが、この時間はまだ混雑しておらず、あっさりと3分程度で香港の出国手続きを済ませ、5時半発のフェリーに乗船することが出来た。
乗客は少なく、座席の50%程度が辛うじて埋まっている。恐らく18度設定のクーラーがガンガンに効いており、人口密度の低さも手伝ってかなり寒い船内である。
マカオに向かうフェリーの中では、初のマカオ訪問に興奮を隠せない信彦と、情報を断片的に与えることによりその信彦を焚きつける貴博が、ハイテンションで作戦会議を実行していた。日本語で会話をしていても、香港の尖沙咀(チムシャツイ。九龍半島の中心地で観光客が多いエリア)以外であれば、内容を聞き取られる可能性は5%にも達しないが、時折日本語堪能な可愛い女の子がいるので要注意である。
貴博「マカオの夜遊びには、サウナとナイトクラブがあるんだよ。これが基本の第一条かな」
信彦「なるほど」
貴博「この2つが二大娯楽なんだけど、まずは、サウナに行くべきだと思ったから、サウナのクーポンを買ったんだよ。とにかくマカオのサウナが優れものでさ。サウナの中で全てが完結し、全ての欲望が充たされるんだよ!」
信彦「サウナに宿泊できるんだっけ?」
貴博「簡易宿泊な感じだけど、泊まれるよ。もちろんホテルに泊まっても良いんだけど、信彦さんにもサウナ宿泊を満喫して欲しいと思ってね。」
信彦「是非、望むところだよ!」
ここでも、3つの好きな言葉のうちの1つ「人生は何事も経験」を実践である。経験して失敗するほうが、経験せずに何も起こらないよりも100倍良い。
香港からマカオに向かうフェリーは、香港を出航してから15分ほどは香港の街の景色が見えるが、それ以降は海に出てしまうため、全く周りに何も無い状態が続く。
貴博が信彦にマカオの「いろは」を一通り叩き込んだ頃、やや薄暗くなり始めた海の向こうに、マカオの強烈なネオンサインが突如登場した。まさに、薄暗闇から突然現れる夢の桃源郷である。
香港を出発してフェリーに乗ること約1時間、信彦はマカオの地に初めて降り立った。
第2話に続く