桃源郷の歩き方 東莞常平編第1話 ~昼下がりの香港~
2011年7月の、とある金曜日の昼下がり。前日夜にシンガポール(新加坡, Xīnjiāpō)から香港(Xiānggǎng)に移動し、朝から香港金融街の1つであるセントラル(中環)で2件の投資家との面談を済ませた信彦の心は、一帯にそびえ立つ高層ビル群の屋上にロープで引き上げられるような高揚感を覚えていた。
信彦「予定通り面談は終了したよ。そちらはどう?」
貴博「こっちは既に準備万端だよ。今どこ?」
香港に住み始めて1年ほどの貴博にフェイスブック・メッセンジャーを送ると、間髪入れずに返信が届いた。
貴博は父親が経営する貿易会社で働く次男坊である。信彦と貴博が知り合ったのは東京だが、その後貴博は会社の事情により香港で勤務を始めた。貿易会社の年商は60億円ほどと聞く。詳しい経済事情は存じ上げないところだが、百歩譲って大富豪ではないとしても、金回りは悪く無さそうである。しかし、それよりも重要なことは、彼と一緒にいると心地良さを感じることである。
信彦は、あまり顔や態度には出さないが、人の好き嫌いが非常に明確である。独自の評価基準により、気持ちの良い人を好み、気持ちの悪い人を嫌う。貴博は、勿論大変気持ちの良い人である。併せて言えば、好きな言葉は「人生は何事も経験」「適正価格を見極めよ」「据え膳食わぬは男の恥」の3つである。
伸彦「じゃあ、僕の泊まっているホテルで良いかな?セントラルのマンダリン・オリエンタル」
貴博「オッケー、30分で行くよ」
協議の結果、信彦が泊まるマンダリン・オリエンタル・ホテルのクリッパー・ラウンジで合流することとなった。ちなみに同ホテルは、グローバル展開するマンダリン・ホテル・グループの第1号店で、開業は1963年まで遡る由緒正しき素敵な高級ホテルである。
ちょうど30分で、時間に正確な貴博が到着した。老若男女を問わず、時間に正確な人には心地良さを感じるものである。
貴博「昨日の夜着いたの、遅かったんでしょ?お疲れ様!」
信彦「ありがとう。でも、今日の夜に備えて昨日は早く寝たから、今はエネルギーに溢れているよ」
昨晩はホテルに到着し、シャワーを浴びて日付が変わる前には就寝した。今日の桃源郷への大冒険に備えて。
貴博「ところで、ちょっとした問題発生なんだけど」
貴博が苦笑いをしながら話を切り出した。
信彦「何?仕事のトラブル?女性関係?」
貴博「いや、そうじゃない。ジョージが今日都合が悪くなって、桃源郷に行けないみたいなんだ」
信彦「ガーン、マジか?!」
ジョージは2人の共通の友人で、香港生まれ・香港育ちの華人である。なお、香港人は皆、自分達で好き勝手な横文字ニックネームを名乗る。そのニックネームを名刺にまで書いてしまうところが日本人にはイマイチ理解できないところである。極めて東洋人的風貌で、洋風な要素はゼロだが、ニックネームは正統派のジョージである(ジョージの中国語名は忘れてしまった)。
ジョージは香港で不動産投資を行っており、成功と失敗を繰り返しながらそれなりの資産を形成している模様だ。しかし今はそんなことはどうでも良く、重要なことは、ジョージが今日の桃源郷への旅先案内人をつとめてくれる予定であったという事実である。香港とその近隣エリアである広東省(広东省 Guǎng dōng shěng)に関しては知らぬことの無い彼の「ガイド」付きであることが、桃源郷行きを決めたきっかけだったのである。
信彦「流石に初心者の日本人2人だけではキツイかな?でも、キャンセルするのは残念だよな。」
「人生は何事も経験」を座右の銘とする信彦にはキャンセルする気など毛頭無かったが、探りを入れる意味で貴博に尋ねてみた。
貴博「いや、ジョージがある程度事前に情報くれているから問題無いよ。2人で冒険の旅に行ってみよう。人生は何事も経験だからね」
何のことは無い、1分も経過せずに予定通りの決行が決定した。 「人生は何事も経験」 を共通の座右の銘とする2人なので、当然と言えば当然の帰結ではある。
信彦「今2時半だから、お茶飲んで3時に出発にしようよ。持ち物は、パスポートと2泊分の着替えくらいあれば十分だよね?」
貴博「オッケー。あと、現金も忘れずにね。ちなみに、ジョージが中国式カラオケ(KTV)を予約してくれているみたい。汇美酒店(フイメイ・ホテル Huì měi jiǔdiàn)の中国式カラオケ(KTV)が彼のお気に入りみたいだよ!」
信彦「それは有難い話だね」
お茶を飲み終えて信彦は部屋に荷物を取りに戻り、2人は予定通り3時にマンダリン・オリエンタル・ホテルを出発した。
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最寄り駅まで徒歩、そこからMTR(香港の地下鉄だが、地上を走っている部分も多い)に乗り、中国との国境である深圳羅湖駅(深圳罗湖站 Shēnzhèn luōhú zhàn)に向かった。広東語ではローウー、普通語(マンダリン)ではルオフーと発音する。香港のタクシーは渋滞に嵌ると全く時間が読めなくなるため、ハイパー混雑の朝晩ラッシュ時以外は便利で安価なMTRの利用がオススメである。
MTRを乗り継ぎ、街中の都会の風景が田園風景に変わり、中国との国境が近づいていることを感じさせる。「香港にもこれほどまでに美しい自然があるのだ」と思っている間もなく深圳羅湖駅に到着した。セントラルのホテルからの所用時間はトータル約60分である。
MTRの中では、お互い未知の桃源郷デビューへの高まる興奮を抑えきれず、ハイ・テンションでの情報交換と作戦会議を実行していた。日本語で会話をしていても、尖沙咀(チムシャツイ。九龍半島の中心地で観光客が多いエリア)以外であれば、内容を聞き取られる可能性は5%にも達しないが、時折日本語堪能な可愛い女子がいるので要注意である。
信彦「羅湖に着いたね。イミグレが混んでなければ良いけど」
貴博「4時なら、まだそんなに混んでないと思う。僕は香港居民(香港居住者)のレーンで行くから早く抜けると思うので、出国エリアを出たところで待ってるよ」
信彦「すまないね」
香港は中国の特別行政区であり、中国本土との間を自由に往来することは出来ない。香港居民や中国人、外国人などステータスにより手続きも異なるが、往来については外国との間を入出国するのに近いと考えるべきである。羅湖の国境では、まず香港を出境するゲートがあり、香港を出境して同じ建物内を徒歩で移動すると、中国側の入境ゲートが登場する。つまり、歩いて国境を渡ることになる。島国で育った日本人には斬新な光景であり、 「人生は何事も経験」 を座右の銘とする信彦にとって大変楽しい経験でもある。
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まだ午後4時過ぎであったため、15分程度で出境・入境を済ませることが出来た。酷い時は1時間以上かかることもある。
貴博「ここからは、新幹線パクリの和諧号に乗るよ!」
貴博は、英語は堪能だが中国語(普通語。マンダリン)は話すことが出来ない。香港とは異なり、中国側に入ると英語がほぼ通じなくなるが、以前に何度か和諧号を利用したことがある模様で、東莞常平までの切符の購入もスムーズに完了した。
和諧号の指定された席に座ると、なんと進行方向逆向きの席であった。「こんなものが今どきあるのか」と一瞬戸惑いを見せたものの、興奮のアドレナリンはそのような些細な問題を瞬時に吹き飛ばしてしまった。逆向きに進行する和諧号で貴博と隣り合わせに座り、作戦会議を継続した。
桃源郷デビューの2人が、ジョージからの情報ならびにインターネット情報でかき集めた「つたない」情報を整理すると、以下の通りであった。
- 中国式カラオケ(中式KTV)という接待付飲食店が多数存在する。
- 接待してくれる美女は本人を見て選ぶことが出来る(日本のように写真やミラー、もしくは店側による配属決定ではない)。
- 美女の平均年齢は20歳前後で、品質は非常に高い。
- 中国語以外の言語はほとんど通じない。英語はHello, Thank you程度なら通じるかもしれない。
- 選んだ美女をホテルの部屋に連れて帰ることが出来る。
- 予算は飲み代も含め1日1人1,500~2,000人民元くらいあれば十分である(当時の為替レートで18,000円~24,000円程度)。
- サウナという別の性的娯楽も多数存在する
後に明らかになるが、字面だけを見れば比較的正確な事前リサーチであった。しかし、このような安っぽい箇条書きで描写するのは人としてどうかと思うほど、その桃源郷は後頭部を激しく鈍器で殴られるような衝撃の連続であり、2人の想像を遥かに超越するものであった。
丁度この程度の情報整理が出来た5時半に、大都会の深圳を出発して森林地帯・農村地帯を抜けた電車が東莞常平駅に到着した。
第2話に続く