桃源郷の歩き方 東莞常平編第12話 ～千人の衝撃～
世界の桃源郷 東莞常平
信彦と貴博がタクシーに乗り約10分、17：10頃に欧亜大酒店に到着した。ジョージの「黄金マニュアル」によれば、ここは5つ星ホテルらしい。大層立派な外観のホテルである。
丁度２人が到着した頃、美女の大群が建物の中に入って行くのが見えた。「彼女達は、今日出勤の中国式カラオケ（KTV）の美女なのかな？」と、期待感が膨らむ。
信彦と貴博の2人は、この欧亜大酒店のロビーでジョージと落ち合うことになっていた。一足先に香港から到着していたジョージが、満面の笑顔で２人を迎えてくれた。ここからは、３人の間での会話言語は英語に変わる。
ジョージ「2人とも、今日は一段とハンサムだね！」
貴博「何と言っても、ここは桃源郷だからね！」
信彦「この桃源郷、ほんとクレイジーだね！」
ジョージ「今日はもっとクレイジーだからね！覚悟してね！」
貴博「準備万端だよ！」
信彦「のぞむところだよ！」
３人は全く以てどうでも良い高校生のようなハイテンションの会話とハイタッチを交わす。ジョージは、よほど桃源郷で信彦と貴博に合流出来たことが嬉しかったのか、2人の肩を同時に叩き、大仰に肩を組んでくる。
ジョージに促され、2人はまずホテルの部屋にチェックインした。土曜日ということもあり、1人570元（＠12円換算で7,000円弱）と、昨晩よりは高いが、何と言ってもここは東莞常平が誇る５つ星ホテルである。そこそこ年季は入っているものの非常に立派なホテルであり、お手頃な価格と言うべきであろう。
既にチェックインを済ませていたジョージを含む3人は、まずは客室に上がり荷物を置き、再度1階ロビーで待ち合わせをすることにした。信彦と貴博は12階、ジョージは13階の客室である。3人は17時40分にロビーに揃った。建物の正面玄関を出て右手方向に移動し、右折して少し進んで右手にある中国式カラオケ（KTV）専用の入り口に向かった。
中国式カラオケ（KTV）専用の入り口は、ド派手で眩い世界への入り口であった。ホテル本体のロビーは比較的地味な雰囲気だが、中国式カラオケ（KTV）は超ド派手である。昼間、マッサージやサウナでまったりと過ごしていた信彦と貴博の2人は、ここで一気に目が覚めた。
1階ではDJが20人程度たむろしていたが、ジョージの馴染みのマネージャーである甜甜（ティエン・ティエン）が馬鹿者3人を迎えに来て、3階のカラオケ部屋に案内した。凄まじい数のカラオケ部屋が並んでおり、何だか昨日の中国式カラオケ（KTV）がこじんまりとしたアットホームな場所であったと思えてしまうほど、今日のここ欧亜大酒店の中国式カラオケ（KTV）は全てを凌駕し圧倒する凄まじい雰囲気を醸し出している。
ジョージ「昨日の汇美酒店（フイメイ・ホテル）の中国式カラオケ（KTV）も良いんだけど、ここはスケールがでかい。あとで判るからあまり説明はしないけど、とにかく凄いから」
信彦「それは楽しみだなぁ！」
3人の部屋を担当するDJもなかなかの美人である。スラっと背が高く、モデルのようなナイス・スタイルだ。ニックネームはマイクらしいが、マイクは普通男性のニックネームではなかろうか。
カラオケ部屋に入ったのが17時55分頃。5分程たつと、甜甜が片言の英語で話し始めた。流石は５つ星ホテル、普通語（マンダリン）以外にも、英語が多少通じる模様だ。
甜甜「今から花街（フラワー・ストリート）が始まるわよ」
信彦「おお！花街！」
甜甜「わかるの？」
信彦「わかるよ！当然だよ！」
甜甜「凄いね」
何も知らなかったウブな昨日と比べ、僅か1日で大成長を遂げた信彦なのだ。
甜甜に連れられ、馬鹿者3人は花街の会場の1つである3階ロビーに到着した。
貴博「おおっっっ！！！いきなり、めっちゃ可愛い、この子！」
信彦「スゲー！！！みんなモデルみたいだな！」
ジョージ「だろ？」
（写真はイメージです）
甜甜「この階はモデル・クラスの階よ。一番ランクの高い美女の階。まずは一番上の5階まで行って、順番に降りてくるようにしましょうよ」
螺旋階段を上り、一旦4階は素通りして花街会場の最上階である5階まで上がると、その5階の広大なロビーの壁沿いに同じ制服を着た美女がずらっと並んでいた。このフロアだけで既に300人以上の美女がいる模様で、しかも丁度花街が始まるタイミングであったため、明らかに現在進行形で美女が増加していっている。日本のように、全員がきちんと6時丁度に並ぶのではなく、何となく6時頃にダラダラ集まってくるところも、異国情緒があって琴線に触れる。
（写真はイメージです）
甜甜の説明によると、この5階は一番値段の安いクラスの美女が並んでいるとのこと。しかし、日本の女優やアイドルのようなかなり可愛い子も当然の如く見受けられる。恐らくここでも、中国における「身長と価格の比例の法則」に基づくプライシングが行われている模様である。
3人は、「まずは軽く調査」の意味で5階ロビーを一周してみた。可愛い子の比率は昨日と同じ程度の印象だ。つまり、「めちゃくちゃ可愛い子」が20％、「可愛い子」が20％、「可もなく不可もなく」が40％、「売れ残り確定」が20％程度の比率である。東莞常平2日目ということで、昨日よりは冷静であり、カウントは正確な可能性が高い。
美女からの視線がガンガン飛んで来て、マネージャーと思われる30代の女性達から強烈な営業攻撃が度々入るが、「まずは選ばず」に、4階に移動することにした。
先程登ってきた螺旋階段を今度は下っていくのだが、先程は誰もいなかった螺旋階段にも20人以上の美女がずらっと並んでいる。各階のロビーに並びきれない美女達が、場所がなくやむを得ず螺旋階段に並んでいる模様だ。かなり可愛い子も並んでおり、気を取られて階段から滑落しないように注意が必要である。
（写真はイメージです）
4階ロビーは、「真ん中の価格帯」の美女が集まっている模様だ。全員、5階とは違う制服を着ている。中国における「身長と価格の比例の法則」の通り、5階よりも平均身長は5cm程度高い165cm程度と見受けられる。クオリティ・レベルの比率は5階と同じ位だが、「可愛い」傾向の5階に対し、この4階は「美しい」傾向が強い。
今日は「頬赤丸さん」には出あわなかったが、濃いキャラの美女は今日も漏れなく混じっている。気になったキャラは、「濃厚眉毛美女」と「肝っ玉かあちゃん美女」と「マントヒヒ美女」あたりである。3人とも、「美女」という呼称を付けた通り、「美しい顔」である。特に「濃厚眉毛美女」は、本当に端正で美しい顔立ちをしているが、何故か描いた眉毛が不自然に濃厚で、しかも左右がやや非対称な、実に惜しい存在である。化粧を落とせば実は純正美女の可能性もあるのだが、これだけ他に美女が並んでいる中で、あえてそのようなリスクを犯すことに意味は見いだせない。
4階のロビーも、マネージャーさん達の強烈な営業をかわしながら一通り見終わり、また美女がずらっと30人近く並ぶ螺旋階段を下って3階に向かった。
3階は先程も通過時に少し見たのだが、モデルクラスの美女達の階である。よく見ると顔面は玉石混交ではあるが、皆スタイルは素晴らしく、4階よりも平均身長は更に5cmほど高い170cm程度か、それ以上の美女ばかりである。
また、この3階の中央部分にはちょっとしたステージが設けられており、一部のモデルクラス美女たちによるパリコレさながらの華麗なウォーキングが行われている。
3階・4階・5階の各ロビーと2つの螺旋階段をあわせ、信彦の冷静なカウントでは、美女の数は1,000人は下らない。これ程の強烈な桃源郷は、世界中のどこを探しても、ここ東莞常平にしか存在しない。
信彦は 「人生は何事も経験」 の精神を好むが、この時ばかりは「これを経験せずに一生を終えたら必ず後悔する」と悟った。ついでに言うと、好きな言葉は「人生は何事も経験」「適正価格を見極めよ」「据え膳食わぬは男の恥」の3つである。
（写真はイメージです）
信彦「美女は1,000人位いるよね？」
甜甜「今日は土曜日だから、特に多いわ。金曜日と土曜日は、1,000人は超えているはずよ」
貴博「選り取り見取りなんだけど、余りにも選択肢が多すぎて、選ぶのが大変だよね」
信彦「だよな～」
ジョージ「仕事をサボったらダメだよ。ちゃんと選別しないと！」
信彦はこの間、小玲のことは完全に忘却していた。
第13話に続く
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